はじめに
故人のパソコンのデータを見るときの注意点と安全な進め方
この記事の要点(先に結論)
- 最初に相続人間で「誰が・何を・どこまで見るか」を合意し、作業の記録を残します。
- 原本を書き換えない:初期化・修理・ファイル整理・ソフトのインストールは、必要な調査が終わるまで控えます。
- パスワードを突破しない・故人のIDで各種サービスにログインしない。不正アクセス禁止法や規約違反のおそれがあります。
- BitLocker や FileVault で暗号化されている場合は、正規の回復キー(復旧キー)を探すのが唯一の安全な方法です。
故人のパソコンには何が残っているか
故人のパソコンには、写真や文書だけでなく、ネット銀行・証券会社・暗号資産交換業者の取引報告書(PDF)、ブラウザのブックマークや閲覧履歴、メールソフトのデータ、iPhone や Android のバックアップなど、財産の所在を知る手がかりが多く残っています。紙の郵便物が少ないデジタル資産を探すうえで、パソコンは重要な情報源です。
一方で、パソコンの扱いを誤ると、手がかりが消えたり、家族間の不信やトラブルにつながったりします。調べ始める前に、次の注意点を確認してください。
調べる前に守りたい4つの原則
1. 相続人間で合意し、記録を残す
パソコンの中には、家族にも知られたくなかった私的なやり取りが含まれていることがあります。相続人が複数いる場合は、作業する人・調べる範囲・結果の共有方法を事前に話し合い、合意しておきましょう。作業日時、見たフォルダ、見つかったものをメモに残しておくと、後から「勝手に見た」「データを消した」といった疑いを避けられます。
2. 原本を書き換えない
パソコンは起動するだけでもログやファイルの日時が更新されます。調査の初期段階では、次の行為は避けましょう。
- 初期化、リカバリー、OS の再インストール
- 修理や買取に出す、ストレージを交換する
- ファイルの移動・削除・名前の変更、不要そうなデータの整理
- 出所の分からない「復元ソフト」「解析ソフト」のインストール
必要なファイルは、別の外付けディスクにコピーして作業し、元のデータには手を加えないのが基本です。
3. パスワードを突破しない
ログインパスワードが分からないときに、推測を繰り返したり、パスワード解除ツールを使ったりするのは避けてください。暗号化されたパソコンでは、パスワードを無理にリセットするとデータが読めなくなることがあります。
4. 故人のIDで各種サービスにログインしない
パソコンにメールやネット銀行のパスワードが保存されていても、故人のIDとパスワードでサービスにログインすることは控えてください。他人の識別符号(IDやパスワード)を入力してアクセス制限のあるサービスを利用する行為は、不正アクセス禁止法で禁止されている不正アクセス行為にあたるおそれがあります。多くのサービスの利用規約でも、本人以外の利用は認められていません。金融資産の確認や解約は、各社の相続窓口を通じて行いましょう。
「見られる」と「使ってよい」は別です。保存されたパスワードが画面に表示できたとしても、それを使って故人として振る舞うことは避けましょう。パスワードは、どのサービスを使っていたかを知る「所在の手がかり」として記録し、手続きは正規の窓口で行います。
パソコンを調べる手順
- 電源と状態を確認する:電源アダプターを確保し、スリープや自動アップデートで再起動しないよう注意します。画面のメッセージ(BitLocker の回復画面など)は写真に撮っておきます。
- ログインできるか確認する:パスワードが分かっている、またはエンディングノートなどに記載がある場合のみログインします。分からない場合は無理をせず、次の「暗号化されている場合」を参照してください。
- 手がかりの場所を確認する:書類・ダウンロード・デスクトップのフォルダ、ブラウザのブックマーク、メールソフト、家計簿ソフトなどを、閲覧だけで確認します。
- 所在台帳に記録する:サービス名、見つけた場所(根拠)、日付、金額の目安を一覧にします。
- 各社の相続窓口へ照会する:台帳をもとに、銀行・証券・暗号資産などの相続手続きへ進みます。
ONEQ は、このような調査をパソコンの中だけで行うためのアプリです(技術検証版・配布準備中)。ブラウザやファイル、パソコンに保存された iPhone のバックアップから所在の手がかりを読み取り、根拠付きの台帳にすることを目指しています。原本は読み取り専用で扱い、データを外部に送信せず、ロック解除やパスワード突破は行いません。
BitLocker・FileVault で暗号化されている場合
最近の Windows パソコンや Mac では、ストレージ全体が暗号化されていることが多く、パスワードや回復キーがないと中身を読めません。解析業者に頼んでも、正規の鍵なしで読み出せるとは限りません。
Windows(BitLocker)
BitLocker の回復画面が表示された場合は、48桁の回復キーが必要です。回復キーは、故人の Microsoft アカウント、職場や学校のアカウント、印刷した控え、USB メモリなどに保存されている可能性があります。Microsoft は、紛失した回復キーを提供・再作成することはできないとしています。キーが見つからない場合、パソコンをリセットすると中のファイルは削除されるため、慎重に判断してください。詳しくはMicrosoftアカウントの回復とBitLocker回復キーの違いで解説しています。
Mac(FileVault)
FileVault が有効な Mac では、ログインパスワードか、FileVault の復旧キーが必要です。Apple によると、ログインパスワードと復旧キーの両方を失うとログインできず、ファイルや設定は戻らなくなります。復旧キーを書き留めた紙、パスワード管理の記録、エンディングノートを探してみましょう。iCloud に関連付けている場合の扱いなどは Apple の公式サポートを確認してください。
パスワードが分からないときの考え方はパスワードを忘れたときの正規の復旧手順も参考にしてください。会社から貸与されたパソコンは、私物ではないため勤務先に返却・相談します。
よくある質問
故人のパソコンを家族が見ても法律違反になりませんか?
パソコン本体の中にあるファイルを相続人が確認すること自体は、一般に遺品整理の範囲と考えられます。ただし、保存されていたIDとパスワードで故人のメールやネット銀行などのサービスにログインすると、不正アクセス禁止法や規約に触れるおそれがあります。サービスの手続きは各社の相続窓口を利用してください。
ログインパスワードが分かりません。解除業者に頼むべきですか?
暗号化されたパソコンは、正規の回復キーなしでは中身を読めないことが多く、無理な解除はデータ消失のおそれもあります。まず回復キーの控えやエンディングノートを探し、業者に相談する場合も、データを外部に持ち出さないか、何をするのかを事前に確認しましょう。
パソコンはいつ処分してよいですか?
財産の所在調査と相続手続きが終わり、必要なデータの保存が済んでからにしましょう。相続放棄を検討している場合は、処分が単純承認とみなされるおそれもあるため、事前に専門家へ確認すると安心です。
iPhone のバックアップがパソコンに残っていました。どう扱えばいいですか?
バックアップは写真や連絡先、利用アプリの手がかりになります。暗号化されたバックアップは、設定したバックアップ用パスワードがないと中身を読めません。パスワードを総当たりで探すことは避け、元のバックアップファイルは変更せずに保管してください。
参考にした公式情報
- BitLocker 回復キーの検索(Microsoft サポート)
- FileVault を使って Mac のデータを保護する(Apple サポート)
- 不正アクセス対策(警察庁)
- 不正アクセス行為の禁止等に関する法律(e-Gov法令検索)
- 亡くなったご家族のApple Accountへのアクセスを申請する(Apple サポート)
最終確認日:2026年10月27日
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